スタッフBLOG
土地探しのコツ
2022年 06月 09日 (木) 09:13
造成地における事故
激甚化する自然災害、予測を超え毎年のように繰り返される「過去に例のない豪雨」のニュース。テレビ越しに見る水害の映像から『水害は怖いし、水害の心配のない高台の見晴らしの良い土地がいいなぁ』そんな思いを持って土地探しをしている方も多いのでないでしょうか。
ところがそんな思いを持って土地を探している人が目を疑う映像が今年連続して発生しました。地面が崩れ、流れ出る衝撃…。
2021年6月25日、大阪市西成区の住宅地で擁壁が崩壊し、2棟(計4戸)の住宅が崖下に崩落する事故。当日に在宅していた3人は、事前に避難して事なきを得ましたが、住宅裏の崖が崩れ、家が倒壊し残った1棟も崖下に引っ張って解体した映像に驚いた方も多かったのでないでしょうか。
そして翌月の7月3日に静岡県熱海市の伊豆山付近で発生した大規模な土砂崩れは周辺の家屋を飲み込み多くの人命と財産を奪いました。この災害では起点付近で造成された「盛土」が法令基準を大幅に超える高さであったと指摘され元の所有者に遡って責任問題となってきています。
二つの事件は、原因も内容も違うものですが丘陵地における宅地の危険性を考えさせられる災害でした。
大阪の擁壁崩壊は、土と石のみでつくられた石積みの内側から、長い年月で土が流れ出たことが原因だと考えられています。
造成工事とは…
先に紹介した丘陵地だけでなく、宅地化にともない大小はありますが造成工事は必ず実施されていると思って間違いありません。それでは、造成工事とはどんな工事なのでしょう。
造成工事とは一般的に傾斜になっている土地や山、段差のある田んぼや畑がある土地を、宅地や駐車場など用途にあわせて活用できるように整備する工事のことです。
ただ土地を平らにすればいいという単純なものではなく、地震などの災害時でも安全性が配慮される必要があります。そのため宅地造成等規制法にもとづいて、対象となる宅地造成には区域内の都道府県に申請しなければなりません。
造成工事の種類
●土地の形状を整える
宅地化する前の土地の多くは土地の状況にあわせて変形しており、そのままでは効率的な宅地になりません。そこで土地の有効利用を進めるために造成工事を行い土地の整形化を図ります。
●土地の高低差を整える
田んぼや畑、湿地や沼など道路より一段低くなっている土地は、道路との利便性をあげるため埋め土などの造成工事をする必要があります。
また、傾斜のある土地でも平らな宅地をつくるため「切土」や「盛土」と呼ばれる造成工事を行います。
●土地の土質を整える
田んぼや沼など宅地として向かない土質の場合は、現況の表土を取り除き宅地に適した土に入れ替える工事を行います。
その他に宅地の場合は、インフラと呼ばれるガス・水道・下水道の設置、宅地の排水路(側溝)や大規模な造成工事の場合は雨対策として宅地の面積に合わせた調整池の設置などを含めて造成工事と考えられます。
擁壁をチェックする
団地造成した宅地を見て歩くと、高低差のある土地に造られた擁壁を目にすることがあると思います。実は、この擁壁をよく見ることで危険な造成地を見分けることができるのです。まず見てもらいたいのが「擁壁の種類」です。擁壁の種類は大別して3つ。
■ 石積み擁壁
石積み式の中でも「空石積み擁壁」と「練り石積み擁壁」の2種類があり石やブロックを積んだだけの「空石積み」
に比べ石やブロックをコンクリートで固めた「練り石積み」の方が強度があるといわれています。どちらも古い住宅地で見かけられる擁壁で強度的に注意が必要な場合が多く見られます。
■ ブロック積み擁壁
正方形や長方形のブロックで作られた擁壁で一般に「間知ブロック擁壁」と呼ばれています。住宅地で5mくらいの高低差がある場所で多く見られます。
■ 鉄筋コンクリート擁壁
コンクリート擁壁は、新しい造成地で多く見かけるタイプで大別すると「鉄筋コンクリート擁壁」と「無筋コンクリート擁壁」に分かれます。現場でコンクリートを打設してつくる鉄筋コンクリート擁壁は、強度が高く垂直に立てることができるため敷地を有効に活用できます。
危険な擁壁とは
擁壁に関する法律である「宅地造成等規制法」が制定されたのが昭和36年ですので、それ以前に施工された擁壁は要注意といえます。また、宅地造成等規制法施行後であっても老朽化やその後のメンテナンス状態では危険な擁壁となっている場合がありますので注意が必要です。
それでは、どんな擁壁が要注意なのかみていきましょう。
① 空積み擁壁
擁壁の種類で説明した「空石積み擁壁」で石を積み重ねただけでコンクリートで一体化していないため高くなるほど不安定な状態になります。
ちなみに大阪市の西成で発生した崖崩れは空石積み擁壁が崩壊した結果発生した事故でした。古い石積み擁壁は、たわみや水漏れなどが発生している場合は危険な兆候で要注意といえます。
② 増し積み擁壁
もともとの擁壁の上に後から増し積みした擁壁です。このような擁壁は、全体の土圧や水を含んだ時の荷重を考慮していないことが多く、危険な擁壁といえます。
③張り出し床板付き擁壁
土地の有効活用のため、既存の擁壁の上に床板を突き出した状態の擁壁です。張り出した部分の土台が不安定です。
④二段擁壁
擁壁のすぐ上に新たな擁壁を積んだ状態の擁壁です。安全性を確認し、場合によっては擁壁をつくりなおす必要があります。
擁壁の状態をチェックする
危ない擁壁の形状を紹介しましたが、危ない擁壁の形状だけでなく擁壁の状態も注意深く観察することで危険な状態にあるか判断することも可能です。危険なシグナルとして代表的なものは…
□ 亀裂、ズレ
石積みやブロック積み擁壁では、亀裂やブロックなどがズレているケースがあります。このような擁壁は、すでに危険な状態で水害や地震の時に大きな被害を発生させる危険があります。
□ 膨らみ
石積みやブロック積みだけでなく、既製品のコンクリート擁壁を並べた場合も、土圧によってズレや膨らみがでているケースがあります。このようなケースも危険な状態といえます。
□ 水抜き
擁壁には決められた基準で水抜きが施工されています。水抜きの穴がない、詰まっていて排水されていないなどの状態が見れる場合は、土圧以上の力が加わっている場合があるので要注意です。
このような状態は、危険性だけでなく宅地内の排水がうまくいっていないケースが考えられ宅地としても要注意です。
擁壁から判断できる危険性をまとめてきましたが、造成地では擁壁だけでなく周辺環境をよく見ることで危険を回避できるケースもあり
ます。
周辺の状況も観察する
宅地やそれに接する擁壁だけでなく、宅地の周辺も観察しながら歩いてみましょう。そこには、危険な造成地のサインが隠れているかもしれません。
観察するポイントは、①道路や側溝との段差や隙がないか②近隣家屋で基礎、犬走のクラック(ヒビ)がないか③擁壁などに苔がないか、ジメジメしていないかなどがわかりやすいポイントです。
造成地で起こる不同沈下の種類
擁壁にスポットを当てて危険な造成地の見分け方をみてきましたが、一見平らに見えて安全そうな宅地にも危険は隠れています。
見えないリスクのおかげで、不動沈下を起こしてしまわないように宅地の成り立ちを事前に不動産会社などに確認しておくことも大切です。
見えない不動沈下の原因としては以下のようなものがあります。
・地中の良好な地盤が傾いている
・盛土が固まっていない/地盤が軟弱
・建物が切土・盛土にまたがっている
・杭が良好な地盤に届いていない 等
いずれも、事前の調査と地盤調査で知ることが可能ですが、予め見えないリスクがあることを知って土地を検討することが大切でしょう
土地探しのコツ
2022年 06月 01日 (水) 14:28
地盤調査と基礎
任せっきりで大丈夫?
地盤調査が終わると、たいていのお客様が試験結果の発表を待つ受験生のように、ドキドキしながら連絡を待つことになります。なぜドキドキするかといえば、地盤調査の結果によって地盤改良工事が「いる」「いらない」と大きな分岐点となるからです。さらにその結果如何によって、地盤改良工事の費用が想定していた予算を上回り何百万となってしまうこともあります。資金計画を大きく狂わせてしまう可能性を秘めている工事が地盤改良工事なのです。
そもそも、地盤改良工事は義務なのでしょうか。
実は、『法律上の義務はありません』。建築基準法では、地盤調査は義務づけられていますが、地盤改良は必ずしも行わなくてはいけないと規定されている訳ではありません。土地の固さで、必要で無い場合もあるわけですから、必ず必要とはなっていません。
ただし、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって、地盤調査の結果から、必要とされる対策を講じることが求められ結果、間接的に地盤改良が必要な土地の場合、地盤改良が必須となっています。
地盤改良が必要になる基準は?
一般的な木造2階建て住宅の場合、荷重は11~13kN/㎡で土地の固さ(支持力)が建物の荷重以上あれば沈下しないことにはなります。ところが地盤の強度は一定ではなく、地層ごとの評価、地下水位の有無、造成と元地盤の関係など総合的に判断され判定が行われます。
また、建物の基礎の構造は、「地盤の長期許容応力度が1㎡」につき、
①20kN/㎡未満…基礎杭を用いた構造としなければならない
②20kN/㎡以上30kN/㎡未満…基礎杭を用いた構造またはべた基礎としなければならない
③30kN/㎡以上…基礎杭を用いた構造、べた基礎または布基礎としなければならないと規定されています。(平成12年5月23日建設省告示第1347号 参照)
【基礎杭】
基礎の底面からを堅い地盤まで届くコンクリートの杭を打ちます。
【べた基礎】
家を建てる地面全体に、鉄筋コンクリートを流し込み、コンクリートと鉄筋で、建物の沈下を防ぎます。建物の床下がすべてコンクリートで覆われるので、湿気やシロアリに強い基礎です。ただし、強度が増す分だけ、基礎工事の費用が高くなります。
※立上り部分の高さは地上部分で30cm以上と、立上り部分の厚さは12cm以上と、 基礎の底盤の厚さは12cm以上。
【布基礎】
逆T字状鉄筋コンクリート入りの基礎を柱や壁の下に奥深く(地面から深さには24cm以上)打つ工法で、柱と柱の間は、床下に土が見える部分があります。コストは、ベタ基礎より安く抑えられますが、湿気やシロアリについては対策が必要です。
※底盤の幅は、地盤の強度と建物の種類によって変わります。 それでは、地盤調査の結果で地盤改良が必要になった場合、どのような工事が行なわれるのでしょか。工事の種類と各々のメリット・デメリットや費用の目安。工事発注時の注意点を次回、解説します。
家さがしのコツ(接道)
2022年 05月 25日 (水) 15:23
イエマガ
通路部分で接道する危うさ
誰しも希望地で少しでも安く土地を手に入れたいもの。そんな時に目にする物件が「旗竿地」という形状の土地。
名前の通り旗竿のような形状をしており、旗の部分が広く竿状に伸びた通路部分で接道するタイプの土地です。
市価の1~2割程度安く買うことができ、条件さえ合えば、同じ総体予算で建築やエクステリアに予算を使ってより魅力的な住宅が建てられるポテンシャルを持った土地、それが「旗竿地」です。
そんなポテンシャルを持った土地ですが、その形状ゆえの注意点も存在します。事前に注意ポイントを知って、魅力的な旗竿地を見つけましょう。
良い竿が良い土地の決め手
良い竿選びの第1条件は、もちろん道路と2m以上接すること。まずこれが最低限クリアしてなければ建築もできません。
道路に2m接していれば、あとは心配ないかと言えばそうでもないのです。通路部分には条件があり、一定の条件を満たさないと建築することができません。
接道が2mの次に大切なのは、通路部分の幅員が2m未満の場所がないことです。通路部分の一部でも2m未満の場所があると建築不可となりますので通路の形状にも注意しましょう。
通路部分の取り扱いは各都道府県で条例として定められており、内容も都道府県によって違いがあります。
例えば、東京都では通路部分(竿の部分)の長さが20m超になると、道路に接する間口の幅員が3m以上必要となります。
また、この規定は建物の規模や構造により決められており、同じ20m超でも延床面積200㎡超の建物を建てようとする場合、必要となる幅員は4mとなります。ところが、別の自治体では通路部分が20mを超えていても、通路部分の幅員が2mで建築可能な場合もあります。このように、各自治体で規定が決められているので、事前に所管する行政機関の建築課などで確認しておきましょう。
旗竿地のトラップ
住宅街の中のミニ開発した宅地には旗竿地が多く、通路部分の幅員が2mでは車の出入りも不便なため、お互いに土地を出し合って図(1)にあるような形状で販売している土地があります。
この場合に注意するべきポイントは2つ。
まず、ひとつ目は通路部分の権利形態。
一般的な旗竿地の場合は、図(2)の様に自分の敷地の延長として接道しており敷地と通路部分で一体の敷地となります。
この場合は、①と②のそれぞれの敷地単独で建築計画を進めることができます。その結果、協定書などが無い限り個々に権利があり将来的に塀などで分断される可能性もあります。
次にみられる形態としては相互持合型の通路。
この場合、通路部分を隣地と交換して所有する(図3)形態となっており建築計画をする際には、お互いに相手の同意が必要となります。
これにより通路部分一方的に使うことができず、常に一体の通路として使えるようにしています。
通路部分が、分筆されていない共有型もあります(図4)。
このようなケースだと、常に一体の通路として使うことが、建築の際には共有者の承諾が必要となります。
2つめの注意点は、複数で使用する際の取り決めについてです。
どの形態にしても、通路部分の使用規則や負担などの協定をしっかり決めておく必要があります。
協定書や覚書などの書面がないと、清掃・補修・費用負担などで後にトラブルが発生しやすいので注意しましょう。
水路には危険がいっぱい
建築をするには接道義務で道路に2m以上接する必要がありますが、道路と敷地の間に水路があった場合はどうなるのでしょうか。
敷地と道路の間に水路がある場合、そのままでは接道義務を果たしていませんので、家の建築は不可となります。
しかし、水路が敷地との間に存在するケースがすべて不可となるかと言えばそうではありません。自治体ごとに基準が違いますが、一定の基準を決めて建築が認められています。
例えば、水路の管理者から「水路占有許可」を得て基準に沿った構造で幅2m以上の橋を架けることで建築が認められるケースが多くあります。
このように水路をまたいだ敷地で建築するには、余分な手続きや橋の工事費用、使用料、転落防止用の手すりの設置などが発生するケースがありますので安いからと言って安易に飛びつくのは厳禁です。
また、目で見てわかる水路とは別に「暗渠(あんきょ)」と言われる地下に埋設されていたり、蓋をかけられていたりして見た目ではわからない水路もあります。
このような場合は、管轄する法務局で公図を取得し敷地と道路の間に何もないか確認する必要があります。※登記情報提供サービスを使うとオンラインで取得することも可能です。
地図だけに存在する赤や青い道
道路との接道を邪魔する存在として水路について書いてきましたが、実際に活用されている水路とは別に公図(旧絵地図)上だけに存在する赤道・青道と呼ばれる土地があります。
現在の公図では地番のない土地で今の公図の前、絵地図の時に赤や青で色分けされていた土地です。
公図上に地番のない土地が存在します。
公図を調べて道路との間に地番のない土地があった場合はどうすれば良いのでしょう。
地番の無いこのような土地は「法定外公共物」と言い、そのままでは接道がされない状態になりますので所轄官庁からの払い下げの手続きを行う必要があります。
もちろん払い下げには土地代・登記費用・測量費などの費用が余分にかかることになりますので土地の購入前に十分確認しておきましょう。
住宅を建てるうえで、守るべき『接道義務』。今まであまり意識してこなかった人も多いと思いますが、接道義務の基本である「道路」の基本を知り、「接道」のポイントを押さえることができれば、宅地購入で大きな失敗を招くことはなくなるでしょう。